膨大なデータの中から瞬時に必要な情報を見つけ出す
メモリのボトルネックを解消するCrossbarのReRAMソリューション

2019年2月、mtes Neural Networks(以下、mtesNN)は、スマートフォンやカメラ、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)センサーといった、エッジ(端末)における人工知能(AI)技術開発を推進するコンソーシアム、「SCAiLE(スケイル)」を設立しました。

同年4月2日、来日した設立メンバーを講師に迎え、「最先端AI基幹技術に関する企業向けセミナー」を都内で開催しました。設立メンバーの1社であるCrossbar社は「AIアーキテクチャーを持つ不揮発性メモリの基幹技術について」と題して、同社副社長、Sylvain Dubois氏が講演しました。本記事では、同講演に基づき、同社が開発した「Resistive RAM(ReRAM:抵抗変化型メモリ)」の概要と活用メリット、そしてSCAiLEにおけるCrossbar社の役割について紹介していきます。

エッジAIの将来を支えるReRAMテクノロジー

みなさん、こんにちは。私はCrossbarで、ビジネス開発部門担当の副社長を務めているSylvain Duboisと申します。本日はCrossbarの概要と当社が提供するReRAMテクノロジー、そしてSCAiLEコンソーシアムへの貢献についてお話しします。
Crossbarは2010年、米国カリフォルニア州サンタクララ市のシリコンバレーで設立されました。これまでも米国のベンチャーキャピタルなどから、1億ドル以上の出資を受けています。
当社は、非常に独創的で拡張性の高い、不揮発性メモリである「ReRAM」の市場でリーダーの位置づけにある企業です。
Crossbarは設立から9年が経ちましたが、当社のReRAM技術はIoTやAIの将来にとって非常に重要なテクノロジーであり、現在、既に310の申請済み、160の発行済みの特許も取得しています。
このテクノロジーはどのようなシステムでも利用可能ですが、クラウドアプリケーションを稼働させているデータセンター向けの「Storage Class Memory」を主用途として考えています。またAIにも活用可能であり、今回、SCAiLE に参加したことを契機に、AIを用いたコンピューティングアプリケーション向けのアーキテクチャーの開発も推進しています。このほか、CPUやGPU、FPGA(Field Programmable Gate Array)、SOC(System-on-a-chip)なども、組込み型の不揮発性メモリとして使用することが可能です。

 

現在、AIはエッジ(端末)の方向へと向かっています。カメラや看板、ディスプレイ、家屋、自動車などあらゆる場所、あらゆるモノ、あらゆるデバイスに数多くのコンピューティング機能が実装されています。エッジコンピューティングが注目される理由には、全てのデータをクラウドへアップロードしてAI処理を行うような従来のやり方では、膨大な通信コストが発生するうえ、AI処理に多大な時間を要してしまうことが挙げられます。このように、クラウドAIはIoTアプリケーションには不向きであり、特にLTEなどの携帯電話網を用いた携帯電話アプリケーションには確実に不利なものとなります。

また、重要な情報やアプリケーションのやり取りに、携帯電話網などの一般的な公衆無線接続を介して行うことには不安もあります。自動運転を例に挙げましょう。多くの自立走行車はネット接続され、クラウドAIによってデータ処理や判断が行われます。しかし、数ミリ秒の判断の遅れが命とりになりかねません。そうした自分の命にかかわるやり取りを、不安定で遅延が発生するLTE接続に任せるのは不安ではありませんか? 対して、自律走行車自身にAIを搭載すれば、より迅速な処理や判断が可能となります。
プライバシーやセキュリティの視点からも、スマートホームスピーカーや室内カメラを通じて全てのデータがクラウドにアップロードされることに抵抗を感じる人は少なくないはずです。そうしたことから、重要なデータは自宅、あるいはリビングの中だけで処理して、最低限、必要な情報だけをアップロードするような仕組みが望まれています。このように、信頼性やセキュリティ、プライバシーの確保、より優れたパフォーマンスと省エネルギー性、そして低コストを実現していくためには、基本的なAI処理はエッジ側で行う必要があるのです。

IoTはとても巨大なマーケットに成長しています。2019年だけでも370億個ものIoTチップが全世界で販売されており、市場調査によれば500億から1000億個まで増加していくとの報告も寄せられています。これはとても大きなチャンスであり、私たちがRoboSensing社やmtesNN社、Gyrfalconとパートナーシップを組んだ理由でもあります。各社と密接なパートナーシップを結び、協働していくことで、IoTやAIに関するソリューションやサービスを強化していくことが可能となるからです。