エッジAIの高度化・実用化を推進するコンソーシアム
「SCAiLE(スケイル)」が日米企業4社によって設立

mtes Neural Networks(以下、mtesNN)は2019年4月2日、スマートフォンやカメラ、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)センサーといった、エッジ(端末)における人工知能(AI)技術開発を推進するコンソーシアム、「SCAiLE」を設立したと発表した。SCAiLEの名称は、「SCalable AI for Learning at the Edge(エッジ学習のためのスケーラブルなAI)」の頭文字を取ったもので、設立時の参加企業は、米国シリコンバレーのユニコーン企業(評価額10億ドル以上の非上場、設立10年以内のベンチャー企業)であるCrossbar社、Gyrfalcon Technology社、およびmtesNNと同社のグループ企業であるRoboSensing社の4社となる。いずれもエッジAIとクラウドアプリケーションのハード・ソフトウェアソリューションを開発する、先進のエッジAI技術のプロバイダーだ。

既存の「データ分類」の手法の限界を超え、新しいAI処理を実現する

近年、AIの活用に際しては、ネットワーク上にあるクラウドで処理を行うのではなくセンサーや車、ロボットなといった“モノ”に近い場所で処理を行うことで、反応速度を高める「エッジAI」がトレンドとなりつつある。

mtesNN代表取締役社長兼CEOの原田隆朗は、「当社は基本理念として“think at the Edge”を掲げていますが、SCAiLEに参加している企業は、この“エッジ”という言葉に賭けています。AIと言えば、日本ではクラウド型AIが当たり前のものとなっていますが、近年、欧米ではエッジAIへと軸足が向かっています。今後、日本においてもAIはエッジで花開くと考えており、SCAiLEによって提供されるソリューションが、その最初の解答になるでしょう」と訴えた。

また、mtesNN 代表取締役副社長 兼 COO & CTO濵田晴夫は、「参加各社のテクノロジーを組み合わせることで、エッジにおけるリッチAI処理を加速させ、さまざまなアプリケーションを具現化させていきます。そのためのコア技術となるものが、非常に高速な検索を実現するCrossbar社の『Resistive RAM(ReRAM:抵抗変化型メモリ)』技術、Gyrfalcon Technology社のAI処理を高速化する『AIアクセラレータ』技術、mtesNNのエッジデバイスやAIを結びつけるための技術とプラットフォーム、そしてRoboSensing社のニューラルネットワーク技術や機械学習のための新しいアルゴリズムです」と強調した。

街灯や車、家庭などあらゆるモノ、場所にIoTセンサーが設置されることで、膨大なデータが収集可能となる時代を迎えている中で、SCAiLEが解決しようとしているのは従来のクラウドAI処理における「分類の限界」を超えることにあるという。

クラウドAIの場合、エッジが検知、収集した膨大なデータは全てそのままクラウドにアップロードされ、クラウド上でデータの分類、処理が行われる。そのため、膨大な通信量が発生するだけでなく、AI処理の即時性も損なわれるという課題が生じていた。対して、エッジで収集したデータの分類を行ったうえで、分類済みのデータのみをクラウドへ送信、管理するというのがエッジAIの考え方だ。これであればクラウドへの通信量も抑制できるほか、処理の即時性も担保される。

Crossbar社の副社長、Sylvain Dubois 氏は「IoTシステムが普及し、さまざまなモノに膨大な数のセンサーが搭載される中、画像、音声、動画といった非構造化データをそれらが発生した現場で効率的に探知、認識、収集するだけでなく、イレギュラーなイベントが発生した場合にはそれをエッジAIに学習させ、次にそのイベントが発生した時にのみクラウドにアップロードする、といった新しいAI処理の仕組みが求められています。SCAiLEでは参加各社の有する最先端のテクノロジーを組み合わせることで、その解決法を具現化していきます」と説明する。

 

膨大なデータを瞬時に整理可能な、CrossbarのReRAMソリューション

そうした現状のAI処理における課題を踏まえつつ、各社の代表者から、それぞれが保有するテクノロジーの特徴とエッジAIでの活用における優位性について説明がなされた。

はじめにCrossbar社のDubois 氏が、同社の概要とReRAM技術について紹介。2010年にシリコンバレーで起業したCrossbar社は、ReRAMの領域で業界を先導する企業であり、既に310の申請済み、160の発行済みの特許技術を保有しているという。

同社のReRAMの特徴は、一度に大量のデータを記録するとともに、瞬時にデータを整理する機能を備えていることで、従来にない圧倒的なスピードでの検索を可能としている。またReRAMは不揮発性メモリであることから、電源を切ってもデータが消失しないという特性を持っており、AI機能やエッジデバイスそのものを使用していない間に電源を落としても、データは消えずメモリ上に残るため、超低消費電力が求められるIoTセンサーやAIデバイスでの利用に最適となる。このテクノロジーが適用されるターゲットとして、ストレージ・クラス・メモリをはじめ、FPGA(Field Programmable Gate Array)、eNVM(embedded non-volatile memory)CPUなどのデバイスが挙げられるという。

Dubois 氏は、ReRAMを活用したアプリケーションとして、顔認識を用いたAI監視カメラの例を紹介。これは街中に設置されたAI監視カメラや、警察官のAIボディカメラが不審な人物を認識した場合、データベースに登録された指名手配犯のデータと1秒以内にマッチングを行い、該当する人物かどうかを判別するものだ。また、データベースにマッチするデータがなくとも、認識した顔画像や不審な行動などはAI監視カメラに保存され、後日、その人物が再び現れた場合、自動的に認識し、場合によってはクラウド上の監視システムにアラートを上げることも可能だという。Dubois氏は、「私たちはこのような学習機能を“エッジでの学習(learning at the edge)”と呼んでいます。都度、クラウドにデータを送信し、クラウド上にあるAIに学習させる必要もありません。全てローカル側のエッジデバイスで行われるのでハイパフォーマンスな処理が可能になるのです」と説明する。

濱田も「Crossbar社のReRAM技術の優位性はその処理性能にあります。音声や動画像が複合した、膨大な量のベクトルデータの中から特定のデータ、あるいは類似したデータを抽出する際に、1秒間で40万件のデータの中から当該データを検出することが可能です。つまり人物の画像であれば、40万人ぶんの画像の中からたった1秒で特定の人物を検出できるのです。このような処理をクラウドAIで行った場合、データのアップロードから検索処理、結果のダウンロードまでの多くの時間が必要となります」と補足する。