【IoTフューチャー対談 第5回】
ニューロモフィックチップがIoTの新しい扉を開く
ニューロン技術が実現するAIとセンサー活用の最先端事例

2018年5月、当社は米国のAI(人工知能)チップ開発企業であるGeneral VisionとAI技術に関する共同開発、および日本でのAI人材育成に関して基本合意しました。今号は、IoT業界のキーパーソンと当社のマネジメント層が対談するシリーズ「IoTフューチャー対談」の第5回。当社代表取締役副社長CTO COO 研究開発本部生産本部 本部長の濵田晴夫と、General Vision社のバイスプレジデント兼ソフトウェアエンジニア担当のアン・メネンデス(Anne Menendez)氏が対談を行い、General Visionが人間の情報処理手法を元に開発した「ニューロモフィックチップ」の適用事例と導入メリット、そして将来の展望について語り合いました。

「FAやヘルスモニタリング、ビルオートメーションなど、ニューロモフィックチップはさまざまな分野へ活用が広がる」(メネンデス)

濵田取締役(以下、濱田):先ほどは素晴らしいプレゼンテーションをありがとうございました。参加者の皆さまを代表して、いくつか質問をしたいと思います。先ほどのプレゼンテーションでは、ノルウェーの漁師による、センサーを活用した魚を仕分ける事例が紹介されましたね。クラウドにアクセス不可能な海上で、ニューロモフィックチップを搭載したカメラを使い、獲れた魚を自動的に判別するアプリケーションの興味深い事例でした。このAIテクノロジーですが、他にはどのような活用シーンが考えられますか。

メネンデス氏(以下、メネンデス):確実に需要が見込める分野として、ファクトリーオートメーション(FA)があります。また、スマートフォトセルも挙げられるでしょう。例えば、オムロンは16個のパターンを学習可能なフォトセルを保有しているようですが、ニューロモフィックチップには限界がなく、それ以上のパターンを学習することが可能です。
非常に多くのパターンを学習できるので、製造プロセスの最終段階に巨大な分析装置を1台設置する代わりに、この小型チップを製造プロセスの全工程に拡張させることもできます。
これまでもわれわれは数多くの分析に携わってきましたが、製造工程の最後に分析システムを設置した場合、製造の途中で部品に欠陥が生じたとしても、最終工程に至るまでそれを判別することができません。したがって、各製造工程でAIによる分析を行わせることが重要となります。
このほか、セキュリティ分野での利用も有効となります。セキュリティの目的で利用する場合には、必要な対応を行うためにも、より多くの変動性を考慮しなければなりません。例えば、公共スペースにおけるセキュリティを考えると、多くの人々が通りかかったり、背景が移り変わったりするといったように、変動的な要素が多々あります。したがって、より洗練された検索エンジンが必要となります。
私の出自が“ビジョン”に深く関わっていることもあり、画像や映像に関する活用例が多くなりますが、バイオセンシングやヘルスモニタリングも非常に重要なアプリケーションとなります。一般にこれらのアプリケーションは初期の段階にあり、現在のテクノロジーではまだまだ不十分な側面が見受けられます。
そうした中で、パーソナライズ化されたヘルスモニタリングは、期待の市場と考えています。例えば、医師はわれわれのAIテクノロジーを活用することで、特定の症例をもった患者に関する知識をチューンナップできるようになります。これも非常に興味深い領域ですね。

濱田:なるほど。これらのアプリケーションは、今後、大きな市場となりそうですね。

メネンデス:このほかにも、電気設備や空調設備のほか、防災・防犯設備、エレベーターなどの機械設備をコントロールするビルオートメーションも重要な領域となるでしょう。

「老朽化した設備や機器のヘルスモニタリングも有望な市場」(濱田)

濱田:プレゼンテーションでは、機器のヘルスモニタリングについても言及されていましたね。とても興味深く伺っていたのですが、そうした分野においても既に検証実績があるのでしょうか。

メネンデス:われわれ自身が行った実績はありませんが、煙突から出る炎をモニタリングしている顧客の事例はありますね。ちょっと変わった例では、洗濯機の横に装着して振動の変化をモニタリングするアプライアンスを作った人もいますよ。このように、機器の異常を知らせる警報機としても利用可能です。

濱田:日本でも30年前に建設された風車があって、老朽化が進んでいます。そうした風車に対して振動を探知する仕組みを装備することで、不具合の発生を監視しています。このような設備のヘルスモニタリングも有望な市場ですね。

メネンデス:風車の羽根にセンサーを取り付けて、異変を探知するようにニューロンを訓練することは、さほど難しいことではありません。ほかにも風の有無や天気の状態も併せてモニタリングすることも可能です。
もし、ニューロンが自動的に識別できないような事象が発生しても、そうした異変を伝えてくれます。FPGA内で学習されていない事象については、新しいコンテキストを用いて学習するように指示することもできます。それらのデータは追跡可能であり、かつ、容易に他のシステムへ展開することもできます。ニューロンが得た知識をダウンロードした後、スーパーバイザーにコンテキストを精査してもらうことも可能です。そうした処理を行うことで、そのデータが異常事態の発生を示していたのか、それとも、単にニューロンが学習していなかった、平常時のイベントだったのかを判断できるようになります。このような状態監視に関する全てのアプリケーションは、ニューロンのおかげで標準化することが可能となりました。